2013年9月 2日 (月)

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「未来の社会が生まれる場所~下郷へ行ってきました~」 2013/9/2

「牛乳は本当に体に良いのか?⑦~未来の牛乳を作る酪農家~」 2013/7/30

「地産地消とTPP」 2013/7/8


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TPP
「地産地消とTPP」 2013/7/8

原発、放射能
「カナムの放射能対策②~使用食材の検査状況~」  2013/3/28
「カナムの放射能対策①~放射能の検査方法~」 2013/3/22
「東日本大震災から2年」 2013/3/11
「放射線物質への対応基準を作りました」 2013/2/3

牛乳・乳製品
「牛乳は本当に体に良いのか?⑦~未来の牛乳を作る酪農家~」2013/7/30
「牛乳は本当に体に良いのか?⑥~乳業界の問題点~」2013/7/11
「牛乳は本当に体に良いのか?⑤~牛乳の現状~」 2013/6/21
「牛乳は本当に体に良いのか?④~効率優先の加工方法~」2013/6/5
「牛乳は本当に体に良いのか?③についてのご意見」 2013/5/9
「牛乳は本当に体に良いのか?③~機械と化した乳牛たち~」2013/5/7
「牛乳は本当に体に良いのか?②~牛乳がもたらす様々な健康被害~」2013/4/25
「牛乳は本当に体に良いのか?①~牛乳が体に良いという常識を疑う~」2013/4/15

食品添加物
「菜種から見る日本の植物油事情~植物油の製造方法~」 2013/2/26

遺伝子組み換え食品
「菜種から見る日本の植物油事情~遺伝子組み換え作物②~」 2013/2/18
「菜種から見る日本の植物油事情~遺伝子組み換え作物①~」 2013/2/15

未来へつながる話
「未来の社会が生まれる場所~下郷へ行ってきました~」 2013/9/2
「未来の社会が生まれる場所~大分県下郷村からの便り~」 2013/3/7
「豆腐ブームがもたらしたもの」 2013/2/8

雑記、雑感、その他
「食についてのブログ始めました」 2013/2/3

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未来の社会が生まれる場所~下郷へ行ってきました~

こんにちは、りーさんです。

カナムも夏休みを頂いているため、すっかり更新が遅くなりました。
今回の休みでは初めて九州を周ってきたのですが、ある目的がありました。

それは、以前にブログで紹介したフリーペーパー「雲与橋」の舞台である大分県の下郷と、その編集者の戸倉さんたちを訪ねることでした。(「雲与橋」と戸倉さんについては「未来の社会が生まれる場所~大分県下郷村からの便り~」をご覧ください)


地域ぐるみで有機農業を推進する下郷。
福岡空港から車で2時間ほど、福岡と大分の県境に近い山間部にあります。

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美しい景観。

事前に戸倉さんから「下郷は携帯が繋がりにくいので気を付けてください。」
と言われていたのでちゃんと会えるかどうか不安だったのですが、なんとか無事会えました。

早速戸倉さんに下郷を案内していただきました。
まず向かったのは雲与橋に登場した「下郷農協 ふれあいの店」
地元産の農、畜産物を使った加工品が買えるところです。

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右のお二人が戸倉さんご夫婦。

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地元産の材料を使った味噌、牛乳、豆腐、納豆などが並ぶ。

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一つ一つの商品が素晴らしい。非遺伝子組み換え大豆、消泡剤不使用、にがり100%の豆腐。

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下郷産のお米、小麦粉。もちろん無農薬。
ほかにも干しタケノコ、干しシイタケなどの乾物や、おからクッキーなどお菓子もありました。
ここで戸倉さんから、「野菜があんまり置いてないでしょ。」と一言。
「この辺は野菜を自給する人が多いからあんまりお店では買わないんです。自給できるものはする。自分で作れないものは買いにくるか物々交換する。それが農業の基本だと思うんです。」

ホントですね。自分の食べるものは自分で作る。農業の始まりはまさにそこからだったわけで。いきなり頭をガツーンとやられました。そしてさらに、「こっちへ来て下さい。ここの農協の理念が書いてあります。」という事で外に出てみると、

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「有機農業宣言の農協」

「消費者と提携し、有畜複合経営で金がすべてでない
自給優先の生産と生活をし、健康で人間らしく生きよう!」


またもガツーン!
この理念、本当に素晴らしい。
有畜複合経営とは「下郷のような土地が狭い山の中では大規模農業はできないので、有畜=家畜(牛、豚、鶏など)を飼い、その堆肥を入れて畑を作り、山で椎茸を作ったり、炭焼きをしたりする複合経営で生計を立てていこう。」ということ。(雲与橋第1号より引用)
家畜のえさにも遺伝子組み換え飼料や抗生物質などを使わないのでその堆肥も安全そのもの。

そして自給優先。地域の人たちが食べる分をその地域内で生産する。そうすれば大量に作る必要はないので、無農薬で本当に良いものが作れる。

どこの企業でも団体でも経営理念がどーんと書かれているのは当たり前ですが、下郷農協が素晴らしいのはこの理念を「有言実行」しているところ。それには何よりこの理念に理解を示し、協力してくれる下郷の人たちの力があってこそ。
「下郷でも全部が無農薬ではないんです。でも無農薬に対する理解がある。それが他の地域と違うところ。ほかの土地だとよそから来た人が無農薬でやろうとするとあからさまに批判されたり、いやがらせされたりすることもあるんです。」
現に下郷のすぐとなり町では無農薬の農家さんは少ないそうです。

この日は戸倉さんたちに地元食材を使った料理をごちそうになり、翌日は田畑を見に行くことに。



翌日、戸倉さんに紹介していただいたのは中島信男さん。
「下郷村」の代表であり、木工家、農家でもある。それだけでなく、下郷を活性化するための様々な企画、発案もしています。
戸倉さん曰く、「中島さんがいたから僕たちは下郷に来たようなもの。」とのこと。

お会いしてみると、60歳とは思えないほど若々しく、穏やかな雰囲気の中にエネルギーがみなぎっている方でした。

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中島さん。

早速中島さんや近くの地域の方の田畑を見せていただきました。

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中島さんのお宅の前に広がる田んぼ。
この集落には戸倉さんの田畑もありました。

戸倉さん「この辺は無農薬の人がほとんどです。有機栽培から一歩進んで無肥料栽培のところもあります。」
中島さんや戸倉さんたちも無肥料栽培のお米や小麦を作っているそう。
(実は最近、無肥料栽培の本を読んでいたので心の中はワクワクしていました。)

戸倉さん「イノシシやシカが作物を食べに来るし、有機や無肥料だと雑草も生える。収穫できないこともあったり、とても大変なことが多いけどつらいことは一つもない。すべて楽しんでます。」「この辺りは水がとてもきれいなんです。川からそのまま飲めるところがあちこちありますよ。このきれいな水のおかげでおいしいお米ができるんです。」

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山間の渓流に沿って上流から続く田んぼ、畑。上流から下流まで無農薬の田畑が続く光景にしばし言葉を失いました。文字通りの「理想郷」です。

中島さんの木工工房にもおじゃましました。

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個性あふれる中島さんの作品たち。
木皿を買わせていただきました。

それから中島さんのお宅に戻って、中島さんの無肥料栽培のお米で作ったおにぎりをいただきました。
食の仕事をしている割に表現が拙くて申し訳ないのですが、「言葉にならない」ほど美味しかったです。このお米、米粉にも加工しているとのことです。
生産量が少なく、手間をかけて作っているため価格は割高になってしまうのですが、出来ればカナムでも使ってみたいと思っています。(同じく無肥料栽培の小麦にも興味津々です)

中島さん「需要があるって事が分かればもっとたくさん作れるんだよ。農家の人は作るのは熱心だけど、商売は上手じゃないから。」

そう、それが今の問題点。
生産者と消費者、言い換えれば地方と都市が分断されてしまっている。
それは商売が上手じゃない農家さんが悪いのではありません。

日本の農業は農協が中心になっています。
もともと小規模農家の多い日本では農家を保護する仕組み(天候の影響などで収穫ができないと収入がなくなってしまう。そんな場合に備えて保険や補助金などの制度がある)は必要ですし、農協の仕組みすべてを否定するわけではありません。
しかし今の農協の現状を見ると、首をかしげたくなるような事の方が多いのも確かです。(農協についてはまたどこかで機会があれば書きたいと思います。)

農家さんは自分の作った農産物を農協に卸す。それを何十年も当たり前にしてくれば、農産物を自分で販売することが上手でないのは仕方がないことですよね。そもそも、農協の指導に従わずに、自分で独自の作物を作ること自体ハードルが高いのです。

消費者としても、有機栽培や無肥料栽培の農産物を買える場所はまだまだ少ないですし、直接生産者さんと繋がりを持つ機会はほとんどないと思います。

下郷ではまさにその農協が中心になって有機農業を推進している。この意味は非常に大きい。
そして中島さんや戸倉さんのように積極的に地域を活性化させ、下郷の素晴らしさを発信している人たちが今後もっと必要になっていくことでしょう。
僕も、食の仕事を通してもっと地方と都市を繋げる役割を担わなければ、と思いました。

戸倉さんたちが作ったフリーペーパーがきっかけで、下郷という素晴らしい場所を知ることができました。そして実際に行って現地の人たちにお話を伺い、その土地を肌で感じることで得られたものはとても大きかったです。
戸倉さん、中島さん、それからここでは紹介できませんでしたが、戸倉さんの紹介で下郷に移住してお店を営む方々にもお会いしてお話を伺うことができました。

それにしてもこの訪問で感じたのは、戸倉さんご夫婦の正直で真面目なお人柄。
移住して1年あまりで下郷にすっかり馴染んで、地域の人たちに頼りにされる存在になっている。とても尊敬しますし、こういう人生の選択の仕方もありなんだなあ、と憧れます。


今回訪れたのは夏でしたが、秋には紅葉の名所でもあり米の収穫もある。冬には炭焼きも...またいろいろな季節に訪れてみたいです。

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2013年7月30日 (火)

牛乳は本当に身体に良いのか?⑦~未来の牛乳を作る酪農家~

こんにちは、りーさんです。


参議院選挙が終わりましたね。
ある程度予想していたとはいえ自民の圧勝、現実は厳しいです。
この国はこどもたちの未来に残してあげたいと思うものがどんどん少なくなって行くような気がしています。
ただ、厳しい中にも希望もあった選挙だったと思います。


さて、牛乳の話もいよいよ大詰め。6回に渡って日本の牛乳の9割がおいしさと栄養を失ったものであることを書いてきましたが、今回は素晴らしい牛乳を作る酪農家を紹介したいと思います。



「小寺とき~普通の主婦が作った特別な牛乳~」

素晴らしい酪農家を紹介すると言ったばかりで申し訳ありませんが、最初に紹介する小寺さんは酪農家ではありません。

小寺さんは普通の主婦でしたが、お子さんがアレルギーになったことで牛乳に関心を持つようになりました。ドイツに住んでいた頃に牛乳が好きだった3人のお子さんが、日本に帰国してから牛乳がきらいになり、喘息とアトピーになってしまったのです。それからドイツと日本の牛乳はどこが違うのか?という疑問を持ちました。調べていくうちに日本の牛乳のほとんどはホモジナイズしたUHT牛乳(注1)であり、牛乳本来の味と栄養を失っているばかりか、かえって健康に悪いものになっていることに気付きました。

そして小寺さんは同じ悩みを持つお母さんを誘って有機栽培の自給農園を始め、ノンホモ・パスチャライズド牛乳(注2)を作りたいと酪農家に掛け合ったのです。そうして生まれたのが東毛酪農の「みんなの牛乳」です。

前のブログで僕が試してみたノンホモ・パスチャライズド牛乳も東毛酪農の牛乳です。

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現在、日本の牛乳の9割がホモジナイズUHT牛乳ですが、みんなの牛乳が発売された1982年当時はノンホモの牛乳など販売されておらず、パスチャライズド牛乳ですらわずか2%ほどのシェアしかありませんでした。ましてや酪農家でもない主婦の小寺さんがノンホモ・パスチャライズド牛乳を作りたいと言っても、その実現までには想像を超えるほど多くの障壁があったことでしょう。

東毛酪農のホームページにはみんなの牛乳ができるまでの経緯が書かれています。(文中に出てくる消費者グループの代表というのが小寺さんです。)http://www.milk.or.jp/belief/minnanogyunyu.html

「母乳を高温殺菌して飲ませる母親はいない」という小寺さんの言葉が力強いですね。こどもに本物の牛乳を飲ませたい、という小寺さんたちの愛情が生んだ牛乳と言ってもよいかもしれません。

小寺さんの情熱は素晴らしく、当時の日本ではホモジナイズやパスチャライズなどの情報がほとんどない中、ドイツの牛乳研究の権威から論文を取り寄せるなどして勉強されました。その後ホモジナイズ、パスチャライズについての本も執筆されるなど、研究者も顔負けの成果を残されました。(このブログを書くに当たってたくさんの牛乳に関する本を読みましたが、小寺さんの著書「本物の牛乳は日本人に合う」はとても主婦が書いたものとは思えないほど専門的、かつ消費者の目線から書かれていてとても勉強になりました。)

また、小寺さんは「学校給食にパスチャライズド牛乳を導入する」活動にも力を注ぎました。現在では群馬県東毛地区と東京都の小平市、国立市の小中学校が東毛酪農のパスチャライズ牛乳を給食に導入しています。


東毛酪農ホームページ http://www.milk.or.jp/


注1「ホモジナイズUHT牛乳」
牛乳の脂肪分が表面に浮いてこないように圧力をかけて均質化することをホモジナイズと呼び、120℃~140℃の超高温で殺菌する方法をUHTと呼ぶ。日本の牛乳の9割を占める加工方法だが、牛乳本来の味と栄養が失われ、アレルギーを引き起こしやすい。

注2「ノンホモ・パスチャライズド牛乳」
パスチャライズとは牛乳本来の味と栄養を壊さずに病原菌だけを殺す殺菌方法で、63℃30分間、75℃15秒間など比較的低温で殺菌されるため低温殺菌とも呼ばれる。ホモジナイズせずに低温殺菌した牛乳は味や栄養はもちろん消化にも良く、アレルギーや下痢などの健康被害を起こしにくい。
詳しくは「牛乳は本当に体に良いのか?④~効率優先の加工方法~」をご参照ください。



「日本で唯一、奇跡の牛乳を作る想いやりファーム」


最近映画にもなった「奇跡のりんご」。
絶対不可能といわれたりんごの無農薬栽培を成功させた木村秋則さん。本当に素晴らしい方です。木村さんの作るりんごが「奇跡のりんご」なら、これから紹介する想いやりファームの作る牛乳は「奇跡の牛乳」と言ってよいでしょう。

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何が奇跡なのか。

それは、想いやりファームの牛乳は日本で唯一、一切の加熱殺菌をせず、生乳のまま出荷しているからなのです。
このブログ、特に牛乳の加工方法についてを読まれた方はさぞや驚かれることでしょう。
一般に流通している牛乳は、加熱殺菌をしないと生乳中の雑菌が繁殖してしまうため、全て加熱殺菌してあります。それも日本では120℃~140℃といったUHT(超高温殺菌)がほとんど。牛乳本来の味と栄養を壊さないパスチャライズ(低温殺菌)でも63℃~75℃くらいの熱を加えています。想いやりファームの生乳は雑菌がほぼゼロなので殺菌する必要がないのです。

全く熱を加えないということは、母牛が子牛に飲ませる状態と同じということです。

母牛から搾ったままの生乳にはカルシウムの吸収を助けるCPPという酵素、お腹の調子を整える乳酸菌、それから近年その優れた効果が注目されているラクトフェリンというたんぱく質などが含まれています。ラクトフェリンは鉄の吸収を助けるほか、免疫効果を高めることでも知られており、最近は放射能の害を防ぐことや、中性脂肪を減らす、歯周病菌を殺すこと等が証明されています。

しかし、これらの成分は熱に弱いため加熱殺菌によって失われてしまうのです。

毎度おなじみ、日本乳業協会のホームページでもラクトフェリンの優れた特徴が書かれていますが、熱に弱いとはかかれておらず、加熱殺菌した牛乳にも含まれているような誤解を与える表現になっています。http://www.nyukyou.jp/dairy/milk/milk14.html

牛乳は本来、こうした酵素や乳酸菌の力を借りることで消化吸収されやすいようにできています。アレルギーや乳糖不耐などの症状を引き起こすのは、加熱によって消化を助ける成分が失われ、胃腸に負担をかけるからなのです。加熱の温度が高いほど牛乳の成分は多く失われる、または変質してしまいます。

大手乳業メーカーは「パスチャライズでもUHTでも栄養成分は同じで吸収のされ方も変わらない」と言い続けていますがそうではありません。
パスチャライズド牛乳や、一切の加熱をしない想いやりファームの牛乳は、アレルギーの人でも、乳糖不耐でお腹がゴロゴロする人でも飲めるそうです(個人差はあります)。このことがなにより大手乳業メーカーの主張がウソであることを証明しているのです。


それにしても、想いやりファームはなぜ加熱殺菌しない生乳を出荷することができるのでしょうか?

想いやりファームでは生乳に雑菌が入らないように、びんに生乳を充填する機械を毎日8時間かけて分解、洗浄しています。これだけでも十分すごいことなのですが、この農場がもっとも大切にしていることは「牛を本来の姿に戻してあげる」ことだそうです。

このブログでも取り上げましたが、乳牛は人間の都合で子牛に飲ませる量の何十倍もの乳を出すように改良されてきました。そのために牧草だけでなくトウモロコシや大豆など牛がもともと食べてこなかったものを与え、狭い牛舎で運動不足にし、人工授精で絶えず乳を出すようにして、本来20年以上ある寿命を、5、6年しか生きられないようにしてしまったのです。

想いやりファームの牛は自由そのもの。

広い農場内を好きに歩き、食べたいときに牧草を食べ、眠くなったら牛舎に戻って寝る。
食べているのは無農薬の牧草。搾乳も強制ではなく、乳が張ってきたら自分で搾乳所まで歩いてくるそう。受精も分娩も自然にまかせる。一頭の牛が出す乳量も、一般の乳牛の半分ほどだそうです。

この、一見普通に見える牛たちの自由な行動がとても大切で、これこそが生乳の質を決めるのです。狭い牛舎で運動もできず、体に無理をさせていればストレスも溜まるし病気にもかかる。自然のなかでのびのびと育つ牛はストレスもなく、免疫力も高まるので病気にかかりにくい。生乳の質も高まり雑菌も少なくなる。牛が健康であることがなにより牛乳をおいしくするのです。


北海道の中礼内というちいさな村にある想いやりファーム。
先日、北海道に行く機会がありました。当初行く予定はなかったのですが、たまたま中礼内の近くに行く予定があり、もしかしたら行けるかもと思い無理に時間を作って行ってきました。
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次の予定があったためわずか10分足らずの滞在となり、農場内の見学はできませんでしたが、牛乳を飲ませていただきました。
濃厚だけどすっきりして、飲んだ後に口の中に残らない、そして良い香り。これを飲む子牛が健康に育つのは当然だし、これならこどもにも飲ませたい。なんだかすごく、腑に落ちました。
そしてスタッフの皆さんの穏やかな笑顔がとても印象的でした。ここで働くスタッフの想いやりが形となったもの。それがこの牛乳なのだと実感しました。


実は、今回牛乳について書こうと思ったのはこの想いやりファームを知ったことがきっかけでした。それまで「牛乳に未来はないのでは」と思っていましたし、このブログを批判だけのものにしたくないという思いもあったので、こんなに素晴らしい牛乳を作る人がいることを知らなければこの記事も書かなかったかもしれません。また「牛乳は体に悪い」という僕自身の決め付けや思い込みを正す良い機会にもなりました。悪いものには悪い理由が、良いものには良い理由がちゃんとあるんですね。



想いやりファームホームページ http://www.omoiyari.com/


まだまだ素晴らしい酪農家、乳業メーカーはたくさんあります。もっと紹介したいのですが、毎度毎度の長文のためこの辺にしておきたいと思います。


さて、4月から連載してきた牛乳についてですが、思ったより長く7回になってしまいました。今回改めて牛乳について調べてみると、自分でも知らなかった牛乳の真実が見えてきました。

牛乳は良くも悪くもまだまだ誤解されています。
それは牛乳そのものが体に悪いのではなく、企業の効率優先主義が牛乳を体に悪いものに変えてしまっている、ということです。健康に育った牛の生乳を、正しく加工すれば体に悪いものにはなりません(飲みすぎてはいけませんが)。

大手乳業メーカーは1950年代に始めた効率、利益優先主義を60年以上経っても見直そうとはしません。

毎日牛乳を飲めば健康になれる、牛乳を飲まないと大きくなれない。これらは乳業メーカーが牛乳を売るための戦略です。乳業メーカーにとって学校給食は大きな販売先。UHT牛乳によってどんなにアトピーやアレルギーのこどもが増えても、チーズを食べて死んでしまう子がいても、利益の方が大事なのでしょうか。


牛乳に限ったことではありませんが、経済を優先することで私たちが失うものや被る被害があまりにも大きいような気がします。企業の利益のために体に悪いUHT牛乳を売り続ける。利権にしがみつく人たちのために事故が起きても原発を動かし続ける...
そろそろ経済のみを重視する社会が限界に達していることに私たちは気付かなくてはならないように思います。

今回紹介した人たちはすでに経済優先の弊害を受け止め、未来のために本当に安全でおいしい牛乳を作っています。

国や企業を動かすのは、私たちひとりひとりの選択です。1980年代にわずか2%しかなかったパスチャライズド牛乳が、いま10%まで増えてきたのは他でもない消費者の選択によってなのです。10年後か、20年後か、いつか日本でもパスチャライズド牛乳が当たり前になる時代が来ることを切に願います。


最後に、僕がブログを書くときにいつも思い浮かべる言葉を紹介して締めくくりたいと思います。


「限界を認めれば、私たちはその向こうへ行く」 アルバート・アインシュタイン




参考資料


小寺とき 「本物の牛乳は日本人に合う~ノンホモ・パスチャライズド牛乳の話」 農文協

桜鱒太郎 「未来の食卓を変える7人」 書肆侃侃房

東毛酪農ホームページ http://www.milk.or.jp/

想いやりファームホームページ http://www.omoiyari.com/

日本乳業協会ホームページ http://www.nyukyou.jp/dairy/milk/milk14.html

など
 

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2013年7月11日 (木)

牛乳は本当に体に良いのか?⑥~乳業界の問題点~

こんにちは、りーさんです。


前回は選挙が近づいて来たので、予定を変更して「TPPが食に与える影響」について書きました。(「地産地消とTPP」http://tadashi0928.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-b469.html

TPPに参加して関税が撤廃されれば、オーストラリアやニュージーランドから日本よりはるかに価格の安い生乳が入って来る可能性があります。
海外から生乳を輸入する場合、日持ちを優先するためにUHT殺菌されますが、日本の牛乳はそもそも9割がUHT殺菌なので、消費者にも抵抗なく受け入れられることでしょう。乳業メーカーはあくまで利益団体ですから、コストの低い海外の生乳にシフトすることは容易に予想できます。そうなれば、日本の酪農家は立ち行かなくなってしまいます。
TPP、何とか阻止したいものですね。



さて、牛乳の続きですが、前回までに日本の牛乳の現状について書いてきました。


難しい用語もあって専門的な話になりましたので、ここで簡単におさらいしておきます。


○日本の牛乳の9割は効率を優先したホモジナイズUHT牛乳である

○UHTとはUltra High Temperatureの略で、120℃~140℃の超高温で殺菌する方法である。

○ホモジナイズとは牛乳の脂肪分が表面に浮いてこないように圧力をかけて均質化することである。これをしないと120℃~140℃の熱をかけられないため、UHT牛乳は必然的にホモジナイズされている。

○UHT牛乳ではナチュラルチーズは作れない。

○牛乳は本来飲んだ後に胃の中で一度固まり、ゆっくり溶けることで消化吸収が良くなるが、UHT牛乳ではたんぱく質やカルシウムが熱によって変性し、胃の中で固まらないため栄養成分が吸収されづらい。また胃の中で固まらずに直接腸に入った牛乳は腸に負担をかけるため、お腹がゴロゴロする、下痢をする、アレルギーになりやすくなるなどの健康被害を引き起こしやすい。

○パスチャライズ(低温殺菌)とは牛乳のおいしさを損なわず、栄養成分を壊さない理想的な殺菌方法である。



牛乳はもともと栄養豊富な食品としてヨーロッパなどで長い間飲まれてきましたが、流通のために加熱殺菌が必要になっても、「おいしさと栄養をできるだけ失わずに、病原菌を死滅させたい」という考えから「63℃ 30分間」や「72℃ 15秒間」というパスチャライズ法が定着し、ヨーロッパでは主流となってきました。
ところが日本ではこの考え方を無視し、大手メーカーは効率の良いUHT殺菌にこだわり、「どの殺菌方法でも同じ」という海外では通用しない理屈を通し続けています。


今回は日本の牛乳がなぜここまで効率優先のUHT牛乳が主流になってしまったのか、そしてそこから抜け出せないのかを見ていきたいと思います。


「どの殺菌方法でも同じと認めている日本の法律」


原因の一つには、1950年代に厚生省(現厚生労働省)が牛乳の普及を促す為に規制を緩くしたことが挙げられます。

牛乳の成分や殺菌方法は「乳等省令」という法律に定められていますが、そのなかで牛乳の殺菌方法は「62℃から65℃までの間で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。」と定められています。
つまり、法律上「低温殺菌もUHT殺菌も同じである」とすることでメーカーがUHT牛乳を作りやすい環境を整えたのです。

前回も触れましたが、学校給食に牛乳が出るようになったこの時代、供給量を増やすことが先決だったことはある程度仕方がなかったことと思います。ですが、一度低コストで効率の良いUHT殺菌に切り替えたメーカーは、「低温殺菌もUHTも同じ」という規定に甘え、あえてコストと時間のかかる低温殺菌にもどる事はありませんでした。


牛乳特有の流通システムにも、UHT牛乳が9割を占めるに至った原因があるようです。
どんなものなのか見てみましょう。


「地域ごとに集められる生乳」


牧場で生産された生乳は、原則として酪農家が直接乳業メーカーや消費者に販売するわけではありません。
地域ごとに全国10ブロックに分けられ、それぞれの地域の「指定生乳生産者団体」という農協などの団体が乳業メーカーと価格を決めて取引する仕組みです。

例えば、北海道では「ホクレン農協連合会」という団体が北海道内に約7200戸ある酪農家から生乳を集めて各乳業メーカーに販売しています。各乳業メーカーはホクレンから買い取った生乳を自社工場でそれぞれの製品に加工して、消費者に販売するのです。

つまり、明治でも森永でもメグミルクでも、北海道の工場で作られた牛乳の原料は同じもの、ホクレンが集めた生乳を使っているのです。これは北海道以外の地域でも同じ仕組みです。このように、地域ごとの指定団体が生乳を集めて、多数の乳業メーカーに販売する仕組みを「一元集荷 多元販売」といいます。

乳業メーカーは一元集荷された同じ生乳を使って、同じ牛乳を作るわけですから、当然どのメーカーでもできる牛乳に大きな差はありません。

それでも業界の競争は厳しいわけですから、消費者に自社の牛乳を買ってもらうためには、生産コストを下げて価格を安くしたり、添加物を入れた牛乳もどきを作って独自性を出すといった方向に進まざるを得なくなります。
そして高い広告費を使ってテレビや新聞でどんどん宣伝します。コストのかかる低温殺菌よりも低コストで効率の良いUHT牛乳を作るのは自然の流れです。

もはやおいしさや飲む人の健康など考えているとはとても思えません。

ただ、「一元集荷 多元販売」には「効率良く生乳の取引が出来る」事を始めとして、「生乳の質が安定する」「価格が安定する」「酪農家が生産した生乳の全量を買い取ってもらえる」など、多くのメリットがあるのは確かです。

しかしこの仕組みがもたらす弊害も多くあります。


「一元集荷 多元販売」が抱える問題


①酪農家の個性が出せない

ホクレンなどの指定団体を通じて取引される生乳は、どの乳業メーカーに買い取られるか分かりません。酪農家は自分の作った生乳がどのメーカーでどんな商品になるか、選ぶことはできないのです。

指定団体が酪農家から買い取る生乳には品質基準が決められています。以前のブログでも少し触れましたが、乳脂肪分3,5%以上、無脂乳固形分8,3%以上であることや、細菌数や酸度などの細かい規定があります。この基準に外れた生乳は買い取られない、また乳脂肪分が3,5%に満たない場合は半値になるなどの取り決めがあり、集めた生乳が一定の品質を保つような仕組みになっています。

一定の品質にはなりますが、それが必ずしも「良い製品」に加工されるわけではありません。日本の牛乳の9割はホモジナイズしたUHT牛乳ですから、せっかく良心的な酪農家が質の良い生乳を作っても、それがノンホモ、低温殺菌牛乳に加工される可能性は低いでしょう。

「もっと良い牛乳を作りたい」、「遺伝子組み換え飼料や狭い牛舎飼いでなく、無農薬牧草で放牧したい」ノンホモ、低温殺菌の牛乳を作りたい」という酪農家にとって、一元集荷システムから外れて独自の牛乳を作るには大きな障壁が待ち受けています。

生乳を加工する工場を自分で作らなければならない、販売先を探さなければならない、さらに全量買い取りではなくなるので収入が安定しない、など大きなコスト負担とリスクを強いられることになるのです。

一元集荷システムはヨーロッパでも行われていますし、これを完全に否定するつもりはありませんが、独自の牛乳を作りたいと思う酪農家を締め出すような仕組みでなく、小規模でも良い生乳を流通できるような柔軟性があるべきだと思います。


②放射性物質の汚染源が特定できない

生乳を集めることの最大のデメリットは「トレーサビリティが確立できない」こと、つまり消費者に届く牛乳がどこの牧場で生産されたものか分からないということです。牛乳に産地表示ができない理由がこれです。これによって3.11以降は、生乳の汚染源が特定できないことが最も重要な問題となっています。

日本乳業協会(注)によると現状の放射性物質の検査体勢は、
「生乳は、酪農家からタンクローリーで集められ、クーラーステーションと呼ばれる冷蔵保管施設にいったん保管されます。ここから乳業工場に出荷され、牛乳・乳製品が製造されます。このため、放射性物質の検査は、各酪農家単位ではなく、このクーラーステーション単位で行われることが適切です。」http://www.nyukyou.jp/topics/20110615.html
と書かれています。

クーラーステーションには比較的狭い地域の生乳が集まりますが、それでも酪農家1戸ごとに放射性物質の汚染状況は違います。しかも牛乳の放射性セシウム基準値は50Bq/kg。クーラーステーションの検査でこの基準値未満なら、放射性物質が含まれていてもそのまま各乳業メーカーの工場へ運ばれます。

大手乳業メーカーは3.11の後、放射性物質の自主検査をすぐには行わず、消費者の声があってようやく検査をするようになりました。
しかし、乳児用の粉ミルクについては数値を公表しているものの、牛乳については厚生労働省から検査結果の公表要請があるにも関わらず、それを無視する形で非公表としているメーカーがあり、安心できるとは言い難い対応です。


コストなどの事情があるにせよ、乳児用の粉ミルクやこどもたちの給食用の牛乳を作っているメーカーなのですから、もう少し真摯な対応を望みたいものです。牛肉は全頭検査しているのですから。

逆に、この一元集荷の流通ラインに乗せず、無農薬牧草飼育、ノンホモ、低温殺菌など独自の方法で作った牛乳を販売する良心的な小規模メーカーや販売店の方がこの問題に真摯に向き合い、コストのかかる放射性物質検査機を導入してより厳しい基準で検査をし、検査結果を公表しています。

このブログで何度も書いていますが、消費者は自分が買って食べるものについての情報を知った上で選択をする権利があるはずです。



乳業界が抱える問題の構造は、原発や遺伝子組み換え作物が抱えるそれと同じなのです。企業や官僚の利益の為に消費者が被害を被る。「原発は安全で低コスト」「遺伝子組み換えが世界を貧困から救う」「牛乳はこどもの成長に欠かせない」というウソでごまかされ、私たちは真実を知らされないまま...


利益追及、効率優先の企業体制が牛を狭い牛舎に閉じ込め、人工受精で牛乳を作る機械にして、おいしくないUHT牛乳でこどもたちの健康を蝕むという構造を作り、「UHTでも低温殺菌でも同じ」という世界には通用しない理屈を何十年も言い続けています。
マスコミも、大手スポンサーである乳業メーカーの批判はできませんし、規制するはずの農林水産省ですら、天下り先になっている乳業メーカーのことは強く言えない状況です。そんな状態から抜け出せないまま何十年も経ち、今後TPPによって価格競争、利益重視の傾向はさらに強まる気配です。大手乳業メーカーはいつまで消費者をだまし続けるのでしょうか。




さて、これまで6回に渡って牛乳の負の部分をたくさん書いてきましたが、僕は「牛乳そのもの」が悪いとは思っていません。ネットなどでも牛乳の健康被害や牛乳の批判をよく見ますが(自分もしてきましたが)、牛乳を悪者にしてしまったのはほかでもない、乳業メーカー自身なのです。



次回は最終回、「未来の牛乳を作る酪農家たち」です。

牛乳に未来はあるのでしょうか?その答えのカギを握る素晴らしい酪農家を紹介します。



注:日本乳業協会・・・明治乳業、メグミルク(旧雪印乳業)、森永乳業など大手乳業19社と各都道府県の乳業協会などからなる社団法人。http://www.nyukyou.jp/




参考資料

中洞正 「黒い牛乳」 経営者新書

平澤正夫 「日本の牛乳はなぜまずいのか」 草思社

小寺とき 「本物の牛乳は日本人に合う~ノンホモ・パスチャライズド牛乳の話」 農文協

柏久 「放牧酪農の展開を求めて~乳文化なき日本の酪農批判~」

日本乳業協会HP http://www.nyukyou.jp/

など

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2013年7月 8日 (月)

地産地消とTPP

こんにちは、りーさんです。


参議院選挙が近づいています。
4月から牛乳について書いてきましたが、当初の予定を上回り5回で終われないことと、自分の遅筆もあって7月に入ってしまいました。予定では牛乳の記事をすべて書き終えてからこの記事を載せようと思っていましたが、選挙もTPP交渉参加も目前に迫ってきましたので、予定を変更してTPPについて書いた記事を載せます。

これは5月に開催された「nontable」のポットラックパーティーでお配りした冊子に載せたものに加筆、修正を加えたものです。私たちの「食」の大本となる「食料自給」についてもう一度考えてみませんか?


「地産地消とTPP」

今月15日からTPP参加国による会合が開かれます。23日からは日本も初めて交渉のテーブルに着くことになりそうです。
TPPに参加することで私たちの「食」と、日本の農業はどうなるのでしょうか?

政府の試算によると、TPPに参加して関税が撤廃された場合、国内の農業生産は10年間で約3兆円の減産になるとのことです。

2010年度の農業生産額が約9,4兆円なので10年間で約32%も減る計算になります。それに対してTPPに参加した場合、10年間でGDPを3,2兆円押し上げるとのことですが、これは単純計算しても1年当たり約3200億円、GDP約513兆円(2011年度)に対してわずか0,06%の成長率にすぎません。ほんのわずか、上がるか上がらないかの成長のために農業の3分の1を削るという選択がなされようとしています。

そして、今でさえ先進国のなかでは一番低い40%の食料自給率が関税の撤廃によって20%を切るという試算も出ています。TPPに参加するアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの自給率は100%を超え(アメリカ130%、カナダ223%、オーストラリア187%)、TPP参加後の輸出相手国として日本に狙いを定めています。日本の1/2~1/5くらいの価格の米、小麦、生乳などが入ってくれば、もはや日本の農家は立ち行かなくなるでしょう。さらに輸入作物の残留農薬や、遺伝子組み換え食品のリスクもこれまで以上に高まることが予測されます。

食料の8割以上を外国からの輸入に頼ることになるというのは非常に危険なことです。
農作物の収穫は一定ではありません。異常気象などにより輸出国の収穫量が激減するようなことになれば、価格が高騰したり輸出が制限されることは大いにありえます(実際に2008年の世界食糧危機では小麦やトウモロコシの価格が高騰しました)。また為替の変動や、相手国の政治的思惑、相手国との関係の良し悪しも影響してくるでしょう。食料を自給できないということは、外国(の企業)に国民の命を委ねるという事になるのです。

政府は日本の農業を大規模化して強くするという方針ですが、山地が多く農家1件あたりの農地が平均1,8haしかない日本では、いくら大規模化したところでオーストラリア(3385ha)、カナダ(250ha)、アメリカ(197ha)にはとても敵うはずがありません。

TPPに参加しないことが一番ですが、今後の日本の農業は規模を大きくすることよりも自給率を上げる取り組みが必要だと思います。


「ヨーロッパ
の取り組み」

先進国のなかでは低い自給率(56%)のスイスは、日本と同じように国土が狭く、山岳地も多いため、広い農地を確保できません。

そこでスイスは自給率を改善するために「品質の向上」に力を入れています。政府と生協が中心となって、オーガニック、動物福祉(人間のために殺される家畜にも尊厳を与え、できるだけ自然に近い状態で飼育することが望ましいという考え方)、生物多様性、景観などを重視し、これらを推進する農家に補助金を出しています。そして「質の良い食品は価格は高いけれど、本当においしくて、健康にも良い」ということを消費者に伝える努力をしています。消費者もそれを理解し、自国の食品を買う意識が高まっているそうです。

スイスに限らず、ヨーロッパ諸国の食に対する取り組みには見習うべきものがたくさんあります。オーガニックの基準も日本よりずっと厳しいですし、ドイツで約500年続く「ビール純粋令」(注1)や、フランスで生まれ、いまやEU全体の規格になった「AOC」制度(注2)など、「食」をひとつの文化としてとらえ、伝統を守るということが確立されています。
それはこれらの国がアメリカやオーストラリアなどに比べて狭い国土にも関わらず高い自給率(フランス121%、ドイツ93% )を保っていることが物語っています。

遺伝子組み換え作物の承認凍結やミツバチの大量失踪との関係が指摘されているネオニコチノイド系農薬を規制するなど、EUは健康と環境への配慮においても先んじています。
日本では「和食」を伝統文化として世界遺産に申請する動きがありますが、使われる原料の8割が外国産になってしまっては「伝統を守る」ことが形だけのものになりかねないですよね。

 

注1「ビール純粋令」:1516年にドイツで制定された法律で「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」と定められている。500年近く経った現在でも守られていて、これ以外の原料を使ったものはビールと表示できず「発泡酒」と表示される。日本のビールには米やコーンスターチなどを使ったものが多く、ドイツの基準では発泡酒になる。

注2「AOC制度」:フランスのチーズやワインなどに対して与えられる認証制度。製造過程及び最終的な品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質保証である。例えば「シャンパン」と名乗るには、シャンパーニュ地方で特定の原料と特定の製法で作られた物でなければならないなど、非常に厳しい要件が課せられる。
2009年から、この制度はAOPと改められ、EU全体の規格になった。イタリアのパルミジャーノ・レジャーノやイギリスのスティルトンなどのチーズが登録されている。


「国内の取り組み」

日本でも同様の取り組みがされている地域があります。
愛媛県今治市。タオルで有名なこの今治市では、古くから地産地消に力を入れてきました。そして30年前から学校給食に地元産の有機野菜を使用しています。さらに給食のメニューに地元の郷戸料理を取り入れたり、こどもたちに有機農業の体験をさせるなど「本当の」食育を行っています。
そして驚くのは「今治市の給食費は愛媛県の中で最も安い」という事です。有機農産物を使っているのになぜ安いのでしょう?それは地産地消のメリットそのものなのです。

地産地消のメリットは、

①安全性を高める

生産地と消費地が離れているほど日持ちさせるための冷凍、乾燥、加工などの処理が必要になり、ポストハーベスト農薬や添加物の使用リスクが高まる。またトレーサビリティが確立しにくくなる。

②コストが抑えられる

輸送コスト、為替コスト、加工コスト、仲介コストなど

③地域経済が活性化する

生産者と消費者が同じ地域のため、生産活動と消費活動が共に活発になる。また生産者と消費者の間に信頼関係も築かれる。



地産地消が進めば、質が良くて安心な食べ物を安く、安定して供給できるようになる。体に良いものを食べていれば病気にかかりにくくなり、医療費も押さえられる。作り手と受け手の距離が縮まり、顔の見える関係が築ける。


私たちの国は経済成長を追い求めすぎて失ってしまったものがすでに多くあります。
品質の向上と地産地消の推進によって自給率を上げる。これが日本の農業の進むべき方向性だと思います。TPP交渉参加目前の今、生産者と消費者それぞれが「自分たちが食べる物は自分たちの国で作る」という本来は当たり前のことに、もっと関心を持つべきです。生産者は質の良い食品を作り、それを消費者に伝える努力を、消費者も価格だけにとらわれず、食べ物が自分の健康と命を支えていることを見つめ直すことが必要なのではないでしょうか。

TPP交渉に一度参加すれば、抜けること聖域を守ることも難しいようです。
TPP参加に反対の意思を示すのは今度の選挙がラストチャンスかもしれません。

7月21日。選挙で意思を示しましょう。



参考資料

日本政府 TPP統一試算資料
「touitsushisan.pdf」をダウンロード

農林水産省 世界の食料自給率
「2009_foreign_country_sanko5.xls」をダウンロード

農林水産省 日本食文化の世界遺産化プロジェクト
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/

安井孝 「地産地消と学校給食~有機農業と食育のまちづくり~」 有機農業選書

鈴木宣弘 木下順子 「よくわかるTPP48のまちがい」 農文教

など

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2013年6月21日 (金)

牛乳は本当に体に良いのか?⑤~日本の牛乳の現状~

こんにちは、りーさんです。


前回は、日本の牛乳の9割がおいしさや健康よりも効率を優先したUHT(超高温殺菌)牛乳である事を書きました。UHT牛乳は風味を落とし、健康にも望ましくない殺菌方法でありながら、牛乳メーカーは何十年もその体制を変えようとはしません。
保育園や学校給食で毎日こどもたちが飲むものなのに、こどもたちの健康よりも利益の方が大事なんですね。

今回は日本の乳業界の現状と問題についてです。


「まがいものだらけの牛乳売場」

まずは牛乳の現状を見てみます。
久しぶりに市場調査をしてみました。

遺伝子組み換え植物油の時と同じ、某大手スーパーの牛乳売場を見てみると、

Photo

たくさんの種類が並んでいますね。飲むヨーグルトやコーヒー牛乳などは他の棚にあったので、牛乳売場だけでこれだけの種類があるとは思いませんでした。


大手メーカーの牛乳のラベルを見ると...

Photo_2Photo_3

乳脂肪分: 3,5%~3,6%以上 
殺菌方法: 130℃ 2秒間
価格: 198円~238円

前のブログで触れましたが、乳脂肪分は3,5%以上ないと酪農家は半値しか受け取れません。(僕が給食で飲んでいた頃は3,3%くらいだったのですが)
殺菌方法は130℃ 2秒間のUHT(超高温殺菌)ですね。表示にはありませんが、ホモジナイズしないとこの温度での殺菌はできないので、当然ホモジナイズしてあります(ホモジナイズ=脂肪が浮かないように均質化すること。詳しくは前回のブログを見てください)。

それから気付いたことはありませんか?産地の表示がありませんよね。その理由は次回詳しく説明します。


そして次はこれ。

Photo_3

ふつうの牛乳のようですが、少しちがいます。
「常温保存可能品」と書いてありますね。
殺菌方法を見ると、

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殺菌方法: 140℃ 3秒間
普通の牛乳よりも更に高い温度で長い時間殺菌しています。いわゆるLL(ロングライフ)牛乳です。
写真では分からないですが、普通の紙パックではなく常温で販売しているジュースなどと同じ滅菌パックに入っています。

UHT牛乳の本来の目的はこれなのです。
ヨーロッパなどでは日常飲む低温殺菌牛乳は冷蔵販売。保存用のUHT牛乳は滅菌パックに詰めて常温で販売しています。
おいしさと栄養価に優れた低温殺菌牛乳に対して、風味と栄養価は落ちるけど長期保存が可能なUHT牛乳、と明確に区別しています。日本ではUHT牛乳を普通の紙パックに入れて冷蔵販売するという方法で、おいしさも、栄養も、日持ちも犠牲にしたものであることがわかります。

この売場を見ているとほかにも気付くことがあります。

低脂肪牛乳というものがありますね。各メーカーから出ています。

Photo_2Photo_3

価格: 177円~198円
これもUHT殺菌です。乳脂肪分は0,1%~2.0%とメーカーによって様々です。
近年の健康志向から低脂肪牛乳のニーズは多いようです。ふと思うのは、これだけ低脂肪牛乳の需要があれば、乳脂肪分3,5%未満の生乳は低脂肪牛乳用に取引すれば良いのではないかということ。3,5%のために牛に遺伝子組み換えトウモロコシを食べさせ、狭い牛舎で運動不足にして脂肪の多い生乳を作っておきながら、わざわざその脂肪分を加工の段階で減らして低脂肪牛乳を作る、というのはどうなのでしょう。

逆にこんな商品もあります。

Photo_4

乳脂肪分4,5%!!そんな牛乳ができるの??
と思ってラベルを見てみると、

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名称: 乳飲料
原材料: 生乳(50%未満)、乳製品、ホエーチーズ、ビタミンD
価格: 185円

生乳50%未満!そのほかに乳製品やチーズ、さらには添加物まで入れてあります。

生乳100%でないと「牛乳」と表示することはできません。このように生乳以外の原材料を入れたものは「乳飲料」という分類になります。価格も牛乳より少し安いですね。
なんだかややこしいですよね。牛乳と同じ棚に並べられると区別がつきません。

このような商品が意外と多く、中でも分かりにくかったのがこれです。

Photo_7

一見牛乳のように見えますがラベルを見てみると、

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名称: 乳飲料
原材料: 乳製品、生乳(50%未満)
価格: 148円

これも生乳50%未満で乳製品が使われているようですが、乳製品とは何なのかよくわかりません。さらにこの商品にはこんな説明が書いてあります。

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いつもの食卓にぴったりのミルクです!...牛乳ではなくてミルクなんですね!...って納得する人がいるのでしょうか。これもほかの牛乳と同じように並べられていました。価格はなんと147円!ミネラルウォーターより安いです。価格を下げるためだけに作られた商品ですね。
他にもカルシウムやビタミンDを添加した牛乳もどきの商品が牛乳といっしょに並んでいました。


UHT牛乳ではなく、低温殺菌牛乳はないかと探したところ、一つだけありました。

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殺菌方法: 66℃ 30分間
価格: 238円

ホモジナイズはしているようですが、ひとつでもあってほっとしました。
価格も普通の牛乳と変わらないです。この価格で低温殺菌牛乳ができるのに、大手メーカーはそれをやらないんですね。


普段牛乳を買うことのない僕にはこの牛乳売場は衝撃でした。
UHTとか低温殺菌以前に、そもそも牛乳ではないものがこんなにあるなんて!

この牛乳売場には1リットルパックの商品が22種類ありましたが、その内訳は、

生乳100% 成分無調整牛乳・・・10種類(そのうちUHT牛乳9種類 低温殺菌牛乳1種類 ノンホモ牛乳はゼロ)
生乳100% 成分調整牛乳(低脂肪牛乳)・・・4種類
乳飲料(生乳以外の原材料を入れたもの)・・・8種類


牛乳売り場の1/3は牛乳ではないのです。独自性を出すためにこんなに多くの「もどき」商品を出す前に、本当に良い牛乳を作るべきですよね。


ついでにチーズ売場も見てみました。

Photo Photo_2

ずいぶんいろんな種類のチーズがありますが、ここでもあることに気付きます。
それは、ほとんどがプロセスチーズであることです。
プロセスチーズはナチュラルチーズを原料として、それを高温で溶かし、乳化材で固めるという作り方です。

ここでもやっぱり疑問が。
ナチュラルチーズを原料としているということは、乳業メーカーはナチュラルチーズを作っているということ?

答えはイエスです。
プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズは約7割が輸入ですが、大手メーカーでも国内でチェダーチーズやゴーダチーズを作ってから、それをさらに加工してプロセスチーズにしているところがあります。ここで大きな矛盾が生まれます。
それは、UHT殺菌ではナチュラルチーズは作れないということです。
つまり、大手メーカーはナチュラルチーズ用の生乳は低温殺菌していながら、牛乳はUHT殺菌をするという矛盾を平然とやっているのです。しかも、せっかく低温殺菌で作ったナチュラルチーズをさらに高温で溶かすという方法まで。
「低温殺菌でもUHTでも同じ」と言いながら、本当は同じではないことを誰よりも知っているのは乳業メーカー自身なのです。


日本では戦前からチーズが作られていましたが、なじみのない日本人にはナチュラルチーズの臭いや味が受け入れられず、香りがおだやかでクセの少ないプロセスチーズが多く作られました。でも今は状況がちがいます。海外から多くのナチュラルチーズが輸入されて、日本人もそのおいしさに気付いています。現に1990年以降22年間、国内での消費量はナチュラルチーズの方が上回っています(農林水産省 チーズ需給表より)。
日本でもナチュラルチーズの生産が増えてもよさそうなものですが、あまり増えていません。加工する前のナチュラルチーズを売った方が売れると思うのですが...



さて、気を取り直して今度は自然食品店を見てみましょう。

Ff

種類は少ないながらもさすがの品揃えです。牛乳は3種類ありました。

Photo_5Photo_7Photo_6

殺菌方法: 65℃ 30分間
価格:326円~339円

赤いラベルにはパスチャライズ牛乳と書いてありますね。(パスチャライズは低温殺菌しているという意味です。詳しくは前回のブログを見て下さい。)
3種類あった牛乳はホモジナイズはしてありますが、すべて低温殺菌牛乳でした。
小さなメーカーがコストをかけて作っているのでやはり少し値が張りますね。大手が同じように作ればもっと安くなるのでしょうが。

また、ほかの店ではノンホモジナイズド、低温殺菌の牛乳を見つけたので思わず買ってしまいました。

Photo_4Photo_8

殺菌方法: 63℃ 30分間
ノンホモジナイズド牛乳です。

自分で牛乳を買って飲むなんて何年ぶりでしょうか(何しろ卵と乳製品を使わないお菓子屋なもので)。

ノンホモ牛乳はしばらく置いておくと上にクリームが浮くとのことですがどうなのでしょう...コップに注いでそのままにしておくと、

Photo_9

わかりますか?上の方にうっすらとクリームの層が出来ています。飲んでみると...
甘くて良い香りです!!!
そして不思議なことに後味はすっきりして、口の中にベタベタ残らないんです。おいしい!

ちょっと、感動体験でした。


牛乳にしてもチーズにしても、こんなにおいしいものを大手メーカーはなぜ作らないのでしょう?作れる技術がないわけではないでしょう。

そもそも日本の乳業界はどうしてこのような状況になってしまったのでしょうか?



次回は「日本の乳業界の問題」についてです。




参考資料

小寺とき 「本物の牛乳は日本人に合う~ノンホモ・パスチャライズド牛乳の話~」 農文協

日本乳業協会「チーズの作り方」http://www.nyukyou.jp/dairy/cheese/cheese02.html

農林水産省「チーズの需給表」http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/cheese_zyukyu/

など

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2013年6月 5日 (水)

牛乳は本当に体に良いのか?④~効率優先の加工方法~

こんにちは、りーさんです。


前回から時間が空いてしまいました。

今回はまず個人的な話からです。
小学生のころ学校給食で牛乳を飲んでいましたが、「おいしい」と思ったことはありませんでした。でも「牛乳とはこういうもの」と思って毎日飲んでいました。ある日家族で牧場に遊びに行ったときのことです。搾りたての牛乳を飲ませてもらったとき、「何だこれは?」とそのおいしさに衝撃を受けたのを覚えています。よい香りが口の中に広がり、やさしい甘みがありました。それは毎日給食で出てくるテトラパック(古い?)の牛乳と同じものとはとても思えないほどおいしかったのを覚えています。

日本に来た外国人の中には「日本の牛乳はまずい」と言う人がいます。また、海外で牛乳を飲んでいてもアレルギーのなかったこどもが、日本に来てから牛乳アレルギーになったという例もあります。
海外の牛乳と日本の牛乳はどこがちがうのでしょうか?そして搾りたての牛乳とパック詰めされて店頭に並んだ牛乳はどうちがうのでしょうか?

今回は日本の牛乳の加工方法を見て行きたいと思います。少し(けっこう?)専門的な内容も出てきますが、日本の乳業界が抱える問題の本質も含まれているので、できるだけわかり易く書いていきます。

牛乳は工場でいくつかの加工行程を経て製品になりますが、その中でも重要なのが「ホモジナイズ」と「加熱殺菌」のふたつです。


「ホモジナイズ(均質化)」

牛から搾られたままの乳を「生乳」と言います。
牛乳には脂肪分があるため、生乳のまましばらく置いておくと脂肪分が浮いてきて上にクリームの層ができます。そして下のほうは脂肪分が少なく、さっぱりした味になります。そこで圧力をかけて脂肪を細かくし質を一定にすると、脂肪が浮いてこなくなります。この処理を「ホモジナイズ」と言います。日本の牛乳のほとんどがホモジナイズされています。

日本乳業協会(※注)のHPによると、ホモジナイズのメリットは、

1脂肪球が浮いてこないので、始めから終わりまで均一な味わいになる。
2脂肪球、たんぱく質が細かくなるので消化吸収が良くなる。
http://www.nyukyou.jp/dairy/milk/milk09.html

とのことですが、いくつか疑問が残ります。
このHPでは続けて、「ホモジナイズしていない牛乳は、「ノンホモ牛乳」とよばれています。しばらくおいておくと、牛乳容器の上の方にクリームの層(クリームライン)ができるので、最初の一口は濃いように感じられますが、成分はホモジナイズしてある牛乳と同じです。よく振って飲んでください。」とあります。

【疑問その1】成分が同じでよく振って飲めばよいのであれば、ホモジナイズをかける必要はないのでは?

ホモジナイズをかけた牛乳は、脂肪球が小さくなるため酸化しやすくなります。酸化しやすくなるという事は味が落ちやすくなり、日持ちも悪くなるという事です。
脂肪球を細かくして均一な味わいにするというメリットは確かにあるでしょうが、味や日持ちを犠牲にしてまでわざわざ専用の機械で、コストをかけてホモジナイズするのはなぜなのでしょうか?ちなみに「飲むヨーグルト」はパッケージの注意書きに「よく振ってお飲みください」と書いてあります。飲むヨーグルトは水分が分離して浮いてくるためですが、牛乳も同じように注意書きをするだけではいけないのでしょうか?

【疑問その2】ホモジナイズした牛乳は消化吸収が良いというのは本当か?

これらの疑問を解決する手掛かりは、もう一つの重要な工程である「加熱殺菌」にあるようです。


「加熱殺菌」

牛乳は病原菌が繁殖しやすいため、加熱殺菌する必要があります。
加熱殺菌の方法はいくつかありますが、日本の牛乳の9割以上は「超高温瞬間殺菌」という方法で行われています。「130℃ 2秒間」などの表示がされていて、超高温瞬間殺菌された牛乳を「UHT牛乳(Ultra High Temperature)」と呼びます。

それに対して「63℃ 30分間」や「72℃ 15秒間」などの比較的低温で殺菌する方法を「パスチャライズ」と呼び、低温殺菌された牛乳は「パス牛乳」「低温殺菌牛乳」などと呼びます。

63℃と130℃ではずいぶんと温度に差がありますよね。「UHT牛乳(超高温殺菌)」と「パス牛乳(低温殺菌)」の違いは何でしょうか?

先ほどの日本乳業協会のHPによると、「UHTは低温保持殺菌に比べ1万倍もの非常に高い殺菌効果があるといわれています。いずれの殺菌方法によっても、牛乳の栄養は変わりません。たんぱく質は熱により一部変性しますが、栄養や吸収率に違いはありません。」とあります。http://www.nyukyou.jp/dairy/milk/milk07.html

ここでまた疑問が...
【疑問その3】UHTの方が殺菌効果が高いのであれば、みんなそうすればよいのでは?どうしてわざわざ時間をかけて低温で殺菌するメーカーがあるの?

【疑問その4】
どの殺菌方法でも牛乳の栄養や吸収率は変わらないの?63℃でも130℃でもいっしょなの?味や風味も?


これについて、日本乳業協会では、
「たんぱく質は、熱により変性しますが、生卵をゆで卵にするのと同じことで、栄養が減ってしまうことも、消化吸収できなくなることもありません。魚を食べるときに、刺身にするのと、煮たり焼いたりと熱をかけるのとでは、たんぱく質の状態は変わっても栄養は変わらないのと同じことです。」と書いてあります。http://www.nyukyou.jp/dairy/milk/milk20.html

生卵とゆで卵が同じ?刺身と焼き魚が同じ?ずいぶんと乱暴な言い方のような気がするのは僕だけでしょうか。

なんだかこのHPの説明では要領を得ないので、それぞれの殺菌方法について調べてみました。


「パスチャライズ(低温殺菌)」

ヒトが牛乳を飲み始めたのは約1万年くらい前からといわれていますが、加熱殺菌して飲むようになったのは100年くらい前からだそうです。もともと牛乳には優れた栄養成分が豊富に含まれています。しかし同時に病気の原因となる細菌も含まれています。それまで加熱殺菌しない牛乳を飲み続けてき人たちは、「牛乳のおいしさを損なわずに、栄養機能をできるだけ壊さずに、病原菌だけを死滅させる方法はないか?」と研究を重ねた結果、「63℃ 30分間」「72℃ 15秒間」という理想的な方法を確立したのです。

「63℃ 30分間」もしくは「72℃ 15秒間」という方法は、風味の劣化が少ないためおいしさを損ないません。そしてたんぱく質やカルシウムなどの熱変性も少ないため、消化吸収が良いのです。

そしてパスチャライズでは病原菌は死滅しますが、すべての細菌が死滅するわけではありません。細菌は病原菌だけでなく有用な菌もあります。それらの菌が残っていることで、殺菌した後に入ってきた細菌の増殖を抑える働きをするのです。
ヒトの腸内も同じことですよね。悪玉菌を抑える善玉菌の働きがあってこそ、腸内環境が保たれているわけです。


「UHT(超高温瞬間殺菌)」

「120℃~150℃ 1~3秒」という方法は、長期保存ができるように、とにかくすべての細菌を死滅させることを考えた殺菌方法だと言えます。もともとは高温で病原菌も有用菌も完全に死滅させ、滅菌パックに詰めて常温で流通、販売し、6ヶ月から1年日持ちするように作られたものです。

ヨーロッパではUHT牛乳とパス牛乳は明確に分けられ、冷蔵ケースの牛乳コーナーにはパス牛乳、常温の棚にはUHT牛乳が販売されているようです。スイスなどではUHT牛乳はペットフードのコーナーにあったりもするようです。
ところが日本ではUHTの牛乳を普通の紙パックに入れて冷蔵ケースで販売する、という独自の方法が採られています。滅菌パックで常温で販売するとイメージが悪く売れないことから普通の紙パックで冷蔵販売しているのですが、有用菌が生きているパス牛乳に比べて、無菌状態のUHT牛乳の方が殺菌後の細菌の繁殖が早いため、日持ちは短くなります。

そして牛乳に沸点以上の熱を加えるには圧力をかける必要があります。その時に、ホモジナイズしていない牛乳では、たんぱく質が固まり機械が操作できなくなってしまうのです。ホモジナイズするのはUHT牛乳を作るのに必要なためであって、それにもっともらしい理由をつけるために「消化吸収をよくするため」と言われ始めたようです。

また、ホモジナイズした牛乳はアレルギーを引き起こしやすいという報告もされています。
(「本物の牛乳は日本人に合う」より)


「UHT牛乳の問題点」

①風味が落ちる

牛乳の沸点は100℃前後です。120℃~150℃の高温をかけることで、牛乳のたんぱく質に「コゲ」ができてしまいます。この「コゲ」が牛乳特有のいやな臭いになるのです。牛乳はコゲができても黒くはならず、白いままなので見た目は変わりません。パスチャライズではコゲは出来ないため、牛乳本来の良い香りがします。ゆですぎて固くなった卵や、焼きすぎてコゲてしまった魚だって、とてもおいしいとは言えませんよね。たとえ栄養が変わらないとしても、熱を加えすぎてまずくなった牛乳を強制的に飲まされるのは釈然としません。

②たんぱく質とカルシウムの変性

日本乳業協会はたんぱく質の一部とカルシウムが変性することは認めていますが、消化吸収には影響しないとしています。ですがそれは間違いであることが研究によってわかっています。

たんぱく質とカルシウムが熱変性することで、胃の中での消化吸収の仕方が変わるのです。これについては、無農薬の牧草でノンホモ、パス牛乳を作っている東毛酪農のHPから少し引用させてもらいます。

「牛乳たんぱく質は、カゼインたんぱく質とホエーたんぱく質に大きく分けられます。(中略)カゼインは、熱による変性を受けにくいたんぱく質と言われていますが、ホエーたんぱく質で80℃前後から変性が始まります。赤ちゃんがミルクを飲むとお腹の中で固まることは、お母さんは体験的にご存知のことと思います。
この胃の中で固まるということはすごく大事で、固まるときに脂肪やカルシウムを包み込み、この栄養分を体中へ運んでくれます。牛乳も同様に、牛乳に含まれているたんぱく質の約80%を占めるカゼインが、胃の中に入ると胃酸や、酵素ペプシンによりヨーグルトのように固まります。そしてゆっくりと消化吸収されます。チーズはまさにそのしくみを利用してつくられています。しかし、熱変性したたんぱく質では固まらない為、直接腸に流れてしまうのです。(東毛酪農 たんぱく質の熱変性より)」

牛乳は胃の中で固まり、ゆっくりと消化されることでたんぱく質、カルシウムなどを効率的に吸収します。ところが胃の中で固まらないUHT牛乳は、これらの栄養を十分に消化吸収できないだけでなく、腸にも大きな負担をかけてしまいます。固まらずに胃から一度に送られた牛乳を消化するために腸が無理をすることで、乳糖不耐の症状やアレルギーの症状を引き起こしやすくなることが指摘されています。パス牛乳ではお腹がゴロゴロしにくい、アレルギーになりにくいのはこのような理由があるからなのです。

東毛酪農のHPにはたんぱく質とカルシウムの変性によって牛乳が固まらなくなる事を実験した動画がありますのでぜひ見てみてください。

東毛酪農 たんぱく質の熱変性
http://www.milk.or.jp/belief/heatdenaturation.html


これだけ科学的かつ明確な根拠を示してUHT牛乳の問題点を指摘されているのに対して、「生卵とゆで卵がいっしょだから牛乳もいっしょ」という大手メーカーの姿勢はフェアではありませんよね。「UHT牛乳もパス牛乳もいっしょである」というならば、明確な根拠を示してほしいものです。


1950年代、学校給食で牛乳が出されるようになった頃は、日本の牛乳はとても細菌が多く、パスチャライズでは生き残る病原菌もあり食中毒の不安がありました。そこで細菌の多い牛乳でも効率よく全ての細菌を殺せるUHTが受け入れられ、各牛乳メーカーが次々に取り入れていったのです。この頃は拡大する需要に牛乳を安定供給することが先決で、味や健康より効率を優先せざるを得ない事情があった事は確かです。しかし、その後の酪農技術や物流技術の向上で、日本の牛乳もパス牛乳を作れるだけの質になったのですから、まずくて健康にも悪影響を与えるUHT牛乳をやめて、おいしくて消化にもよいパス牛乳を作ることができたはずです。
それにもかかわらず、何十年も経った今でも、「どの殺菌方法でも同じ」という強引な理屈で、低コストで効率の良いUHT牛乳が9割を占める現状は改善されていません。


次回はさらに日本の乳業界の本質的な問題を掘り下げていきたいと思います。



注:日本乳業協会・・・明治乳業、メグミルク(旧雪印乳業)、森永乳業など大手乳業19社と各都道府県の乳業協会などからなる社団法人。http://www.nyukyou.jp/


参考資料

小寺とき 「本物の牛乳は日本人に合う~ノンホモ・パスチャライズド牛乳の話」 農文協

平澤正夫 「日本の牛乳はなぜまずいのか」 草思社

フランク・オスキー 「なぜ牛乳は体に悪いのか?」 東洋経済

東毛酪農ホームページhttp://www.milk.or.jp/

日本乳業協会ホームページhttp://www.nyukyou.jp/


など

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2013年5月 9日 (木)

牛乳は本当に体に良いのか?③についてのご意見

こんにちは、りーさんです。


前回、「機械と化す乳牛たち」ということで、劣悪な環境で飼育される牛について書きましたが、酪農家の方からこんなご意見をいただきました。ご本人に了承を得ましたので、こちらに掲載させていただきます。

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酪農の方からの視点も知っていただけたら幸いです。りーさんの視点も間違ってはないんですが。消費者にちゃんと説明してない生産者の責任もあるし、まだまだ実際この記事のような飼い方をしている酪農家さんもいるかもしれないし。
でも、いろんな農家さんがいるので、一方通行な意見だけだと頑張ってる農家さんが可哀想なので書いてみました。


まず最初に…畜産にかかわらず、農業全般仕事内容は十人十色です。「食べ物を作る」とゆう目標は同じでもそこへ向かう工程(作業)は農家によって一軒一軒違います。酪農だったら…飼育環境・与える飼料・日中の作業内容・牛への愛情…等々その酪農家さんによって大分違います。

私は大学生の時、酪農実習で1日100頭搾っている酪農家さんの所へ行ったことがあります。私も最初「多頭飼いのところは機械化されていてやることはあまりない」と思ってました。しかし、作業をやってみると…朝5時から夜8時まで何かと作業があって体はヘトヘトになりました。酪農家さんに「頭数が多いと機械化されていてもやることたくさんあるんですね~」と言ったら「頭数じゃなくて牛をどれだけ見るかによって変わるんだよ」と言われました。
牛をたくさん「みる」ことによって、その牛に必要なことを見抜き、病気やケガを予防して健康な牛を育てるのが酪農家の仕事。そんな事を考えていない酪農家さんなら頭数が多くてもきっと仕事量は少ないでしょう。逆に頭数が少ないからといってのびのびと牛が育っているかとゆうと、酪農家さんが熱心ではなければのびのびとは育っていないでしょう。

今回りーさんの日記にのっていた飼い方はきっとあまり牛のことを思わない飼い方だと思います。
なのでこの飼い方が常識的に日本で行われている飼い方だと思われると、ちょっと違います。

あと、濃厚飼料は濃い牛乳を出すためとか、牛はずっと餌を喰わされるとか…酪農を勉強した側からすると、「ちょっとニュアンスが違うんだけど…」と、つっこみどころ満載の記事なので「消費者の方はこう思っているのかぁ」と改めて酪農のイメージの悪さを実感しました。

ちゃんと生産者もアピールしないと駄目だなぁ~。

一番大事なのは「百聞は一見にしかず」というように実際見に行くことでしょう。

一般の人達に牛のことについて知ってもらうために酪農には「教育ファーム」という組織があります。全国に教育ファーム認定の牧場があって、事前に申し込めば誰でも牧場見学や作業体験等々ができます。働いてる人達からもお話しが聞けますので、いろいろ気になっていることがあれば聞くのが一番だと思います。

自分が生きていくうえで必ず必要な食べ物だからこそ、ちゃんと自分の目で確かめて選んで欲しいです。

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この方のおっしゃる通り、前回の記事では、日本の乳牛のほとんどが劣悪な環境で虐げられているかのような書き方であったため、誤解を与えるようなものでした。それは僕の意図するところではなかったのですが、説明が足りないこともあり、すべての酪農家の方々を批判するような内容になってしまったことをここでお詫びしたいと思います。

良心的な酪農家さんもいらっしゃることと思いますし、手をかければかけるほど過酷な労働になるのも最もです。そういった方々への配慮に欠けていました。


そもそも牛乳の問題を書こうと思ったのは、素晴らしい考えと理念を持った酪農家の方がいる事を知ったからです。「牛乳に未来はないのではないか」、と思っていたときに読んだ本のなかで紹介されていた、ある酪農家の方の考えに感銘を受け、こういう人が増えていって欲しいと思ったのがきっかけです。(その酪農家の方は次回以降で紹介したいと思います。)

今の酪農、乳業界の批判だけの記事にはしたくなかったのですが、まずは「体に良い」と思われている牛乳の常識の高い壁を乗り越えなければ未来の話ができないと思い、こういった負の部分を強調した書き方になったのも確かです。

飼育環境の問題を取り上げたのは、消費者に一般に知られている酪農のイメージとは違う部分があることを伝えたかったのが一つと、このような飼育状態を生み出している根本にあるのは、大量生産、大量消費型の社会と、生乳を地域ごとに一元集荷してプラントで一括加工する、という日本の牛乳流通システムに問題があるからではないかと考えたからです。

どれだけ良心的な酪農家さんが作った牛乳でも、そうでない酪農家さんが作った牛乳でも、地域ごとに集めて混ぜてしまうのであれば、自分だけ頑張っても全体を変えられないし、それならば質を下げてでも効率を優先せざるを得ない、という状況に陥りやすくなるのではないかと思うのです。


この問題を次回以降では取り上げようと思っています。
それから、既に書いた記事についても加筆しました。
http://tadashi0928.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-d1de.html
生産者側からのご意見、とてもありがたく受け止めました。

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2013年5月 7日 (火)

牛乳は本当に体に良いのか?③~機械と化した乳牛たち~

こんにちは、りーさんです。

前回は牛乳のもたらす様々な健康被害について書きましたが、3回目は日本の酪農の現状と問題点についてです。


みなさんは、乳牛がどんな環境で飼育されているか知っていますか?
「広々とした牧場のなかに牛がいて、のんびりとそこらに生えた牧草を食んでいる」ようなイメージをされる方が多いのではないかと思います。

僕もそう思っていました。でも現状は違うんです!
日本の多くの乳牛たちは広々とした牧場にはいませんし、そこらに生えた牧草も食べていません!

では、日本で飼育されている乳牛はどこにいて、何を食べているのでしょうか?


「劣悪な環境で飼育される乳牛」


日本の乳牛の多くは広々とした牧草地では飼育されず、狭い牛舎の中でその一生を終えます。

牛たちは草も敷かれていないコンクリートの上で綱につながれた状態で一日を過ごし、歩くことはおろか、ろくに後ろを振り向くことすらもできないのです。
ただ同じ場所にずっと居て、餌を食べるのも排泄するのも同じ姿勢。寝る時だけその場にしゃがみ込み、朝がくればまた立ち上がって同じ姿勢...。

狭い牛舎の中でずっと過ごすため、牛同士や人間を傷つけないようにと、角は人間によって切られてしまいます。そして、搾乳にじゃまになるという理由で尻尾まで切られてしまうのです。

さらに、牛は排泄するときには背中を丸めて前かがみになります。そうすると排泄物がうまく排泄溝に落ちずに床に落ちてしまいます。それを防ぐために、牛の背中の上には7000~8000ボルトもの高圧の電線が張り巡らされています。牛が排泄しようとして背中を丸めると、背中が電線に当たり電流が流れるのです。それに驚いた牛は反射的に背中を伸ばし、排泄物が正しく排泄溝に落ちるという仕組みになっています。

全ては効率よく牛乳を作るため。歩き回ればそれだけ体力を使います。その分の体力を、牛乳を作るためだけに費やした方がずっと効率が上がるというわけです。


「人工受精と妊娠、出産を繰り返す牛」

乳牛は成長したら勝手に牛乳を出すようになるのでしょうか?

もちろんそんなことはありません。乳牛も人間と同じく、妊娠して子牛を産まなければ牛乳を出すようにはなりません。牛はより早く、より多く乳を出すために「改良」されています。

乳牛の一生を見てみましょう。

子牛は産まれるとすぐに母親から引き離されます。生後3日は母親の出す「初乳」を飲みますが、その後は母親の乳は飲めません。大事な「商品」である乳を子牛に飲ませるなんてもったいないからです。子牛は脱脂粉乳に脂肪やビタミンなどの栄養を添加した「代用乳」などで育ちます。

生後16ヶ月くらいではじめての「人工授精」が行われます。そして、約9か月の妊娠期間を経て、生後2歳2ヶ月で「初産」を迎えます。出産後は乳が出るようになりますが、もちろん自ら産んだ子牛にその乳は与えられません。そして休む間もなく、産後2ヶ月経つと次の人工授精が行われます。そしてまた出産、人工授精、妊娠を繰り返して、常に乳を出し続けるのです。

3~4回の出産の頃をピークに、牛の出す乳量は少しずつ減っていきます。そうなると餌代などの管理費に比べて採算が取れなくなってくるので、6~7歳になると「処分」されます。

牛の寿命は20年以上あると言われているので、乳牛は通常の3分の1ほどしか生きられないのです。


「高カロリーの濃厚飼料」

狭い牛舎の中で過ごす乳牛は、自然に生えた牧草を食べることは出来ません。
牧草を食べるとしても、ほとんどは輸入された乾燥牧草や稲わらです。

牛たちが食べる餌は「濃厚飼料」と呼ばれるものが中心になっています。「濃厚飼料」とは、トウモロコシ、コウリャン、ふすま、米ぬか、油かすなどを混ぜた栄養価を高めたもの。かつては飼料の中に配合されていた肉骨粉が原因で狂牛病が発生したことは良く知られている事です。牧草だけでは「濃い」牛乳を「たくさん」出すのには向いていないので、こういったものを大量に食べさせて乳量を増やしているのです。濃厚飼料を与えて育った牛が一日に出す乳量は30~40kg、年間で8000~10000kg。牧草だけで育った牛の2倍以上の乳を出すのです。

そしてもう一つ、濃厚飼料を与えた牛が出す乳は文字通り「濃厚」になるのです。
現在、日本では酪農家が出荷する生乳は乳脂肪分が3,5%以上であることが義務付けられています。乳脂肪分が3,5%未満の生乳は半値以下でしか買い取ってもらえません。でも、牧草だけで育てると3,5%に満たないことがあります。乳脂肪分を3,5%以上に保つには濃厚飼料をたっぷり与えて、狭い牛舎で運動不足にさせるほうが効率的なのです。

しかし、牛は本来牧草だけで育つ生き物です。硬い繊維質に包まれた牧草を、4つの胃を使って、さらに反芻までしてゆっくり消化する仕組みになっています。濃厚飼料はこうした牛の消化器の仕組みには合いません。牛にとっては消化が良すぎるのです。消化が良いため、胃の中は胃酸過多の状態になり、中には胃に穴が開いてしまう牛もいます。そこまで行かなくても、消化器の障害が多発します。消化器系の障害は免疫力の低下をもたらすため、様々な病気の温床となるのです。


「遺伝子組み換え飼料の危険性」


「濃厚飼料」の中心となるのはトウモロコシですが、日本では飼料用のトウモロコシは栽培していないため、そのすべてを輸入でまかなっています。輸入先は約90%がアメリカからで、アメリカで栽培されるトウモロコシの約86%が遺伝子組み換えです。(2011年農水省 農林水産物国別輸入概況、2010年 ISAAA報告より)
飼料用に輸入されるトウモロコシはほとんどが遺伝子組み換えでしょう。

問題なのは、飼料用として輸入される遺伝子組み換えトウモロコシは、安全性が確認されていないため、ヒトの食用には認められていないという点です。(厳密には、そのトウモロコシを原料にして作られた製品中にDNAやたんぱく質が残留しないとされる、食用油や醤油などでは使用が認められています。)

ヒトが(直接)食べるのはちょっと心配だけど、家畜なら大丈夫だろう...と言うことなのでしょうか。

遺伝子組み換え作物は、これまで自然界に存在しなかったたんぱく質を生み、それが新たなアレルギーを生み出すのではないかという懸念もされています。
牛乳の成分は母牛が食べたものの影響を強く受けます(だから濃厚飼料を食べさせるわけです)。ヒトも母親が食べたものが母乳に影響しますよね。母乳を通じて乳児が牛乳アレルギーにならないように、産婦人科では授乳中の乳製品の摂取を控えるように指導しています。
遺伝子組み換えトウモロコシを食べた牛が出す牛乳は安全だと言い切れるでしょうか?

日本で遺伝子組み換え飼料が承認されたのは2001年のこと。牛だけでなく、豚も鶏も遺伝子組み換え飼料を食べています。この10年間で3歳児の食物アレルギーが2倍に増えたこととは関連がないのでしょうか?アメリカでも同様にアレルギーを持つこどもが急増し、遺伝子組み換え作物との関連性が指摘されています。

遺伝子組み換え種子メーカーも、国内で承認している農林水産省も、「安全性に問題はない」としていますが、アレルギー患者が急増している状況を踏まえて、安全性の十分な検証がされているとはとても言い難い状況です。

乳脂肪分3,5%以上という取り決めは、「コクのある牛乳を消費者に提供したい」というのが建前ですが、これを達成するためには配合飼料を食べさせる必要があり、本当のところは遺伝子組み換えトウモロコシをアメリカから輸入するための口実なのではないかと思わざるをえません。

EUでは遺伝子組み換え作物に対する懸念が強く、2014年末まで遺伝子組み換え作物の承認を凍結する決定が下されました。


「病気にかかりやすい牛たち」

こうした狭い牛舎の中でほとんど運動せず、本来牧草を食べる牛がトウモロコシを食べていると、病気にかかりやすくなります。消化器系の病気のほかに多いのは乳房炎という病気です。これは牛の排泄物などが乳房に付着し、最近が入り込んで炎症を起こすもの。不潔な環境や、牛のストレス、乳の搾り過ぎなどが原因ですが、放牧している牛に比べて牛舎飼いの牛の方がかかりやすくなります。

牛乳は牛の血液から作られます。1kgの乳を作りだすのには、その400~500倍もの血液が必要だと言われています。1日に40kgの乳を出す牛は16000~20000kgの血液を体内で循環させているのです。この大量の血液に栄養を送り続けるために、牛の体には相当の負担がかけられています。牛の睡眠時間は平均3時間ほど。それ以外はせっせと餌を食べ、牛乳を作り続けます。疲労困憊になり、病気になるのは当然のことですよね。

重要なのは「牛が健康でなければ質の良い牛乳は出来ない」という事。考えてみれば当たり前ですが、日本の乳業界では「牛乳の質」は二の次になってしまっています。


「家畜にも自由を」

牛たちは自由を奪われ、もはや牛乳を作りだすための「機械」と化してしまっています。
牛はもちろん痛みも感じますし、感情も持っています。牛たちを人間の都合の良いように扱い、効率が下がれば容赦なく処分する。日本の酪農業は牛たちを「命」と見なしていないという事です。

EUでは「家畜福祉」と言う考え方が拡がっています。
家畜福祉とは、家畜が人間にとって幸福や利益をもたらすこと、そのために殺されることは認めつつも、痛みやストレスといった苦痛を最小限に抑えることで、「家畜たちの健康と幸福」を向上させるというものです。

1997年には、「動物の保護および福祉に関する議定書」が採択されました。この議定書の中で、「動物は『感覚のある存在』として規定され、動物はモノでも生産財でもなく、人間と同じように痛みや苦しみを感じる能力を持った生き物である」という法的な位置づけが合意されました。

この議定書の基になったのは、1960年代にイギリスで提唱された「5つの自由」という考え方でした。

1、飢え、渇き、栄養欠如からの自由(飼育動物には十分な餌と水が与えらえること)

2、不快からの自由(快適な休息場所と、環境ストレスを避けることのできる環境が確保されること)

3、痛み、障害、病気からの自由(病気やケガが放置されず、適切な治療、予防が行われること)

4、正常な活動の自由(動物それぞれの習性にかなった活動、運動ができる適切な環境が確保されること)

5、恐怖や悲しみからの自由(飼育動物が驚かされたり、乱暴に扱われるといった苦痛にも配慮されること)

いまの日本の畜産、酪農業に欠けているのはこの考えです。
EUでは、この「5つの自由」と議定書に則して、法定基準以上の家畜福祉を実現する農家を推奨し、補助金を出しています。日本では全く逆で、のんびり放牧させて自然の姿で牛を育てる農家を乳脂肪分3,5%の取り決めで圧迫し、家畜福祉を無視して効率のみを追求する農家を推奨しています。



次回は「世界基準から外れた日本の牛乳」についてです。

こどもが牛乳ぎらいなのは「牛乳がまずいから」。まずいのにはちゃんと理由があるんです。そしてまずい牛乳は体にも悪いのです。


5/9追記

この記事をアップした後、酪農家の方からご意見を頂きました。
ここに載せたような酷い環境での飼育が一般的ではないこと。酪農家は一軒一軒考え方も飼育の仕方も違うので、一律的に「こう」とは言えないことなどをご指摘いただきました。
僕も、劣悪な環境で飼育されている牛が実際にどれくらいいるのか(またはいたのか)詳しく調べずに、本に書かれていた内容があまりにショックであったため、ほとんどそのまま書いてしまいました。
言い訳のようですが、僕は一方的に酪農家を批判したいわけではありません。EUの牛たちがすべて良い環境で飼育されているわけではないでしょうし、日本の牛たちがすべて劣悪な環境でもないでしょう。目を向けなければいけないのは、劣悪な環境の牛たちを生み出すことになった根本は何なのか、という事。牛への愛情の差、だけでは言い切れない事情があるからなのだと思います。

この酪農家さんからのコメントについては、次のブログで詳しく書いています。

http://tadashi0928.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-5e4c.html
よろしければご一読ください。




参考資料

中洞 正 「黒い牛乳」 経営者新書

中洞 正 「健康な牛からおいしい牛乳」 コモンズ

柏 久 「放牧酪農の展開を求めて~乳文化なき日本の酪農批判~」 日本経済評論社

古庄 弘枝 「モー革命~山地酪農で無農薬牛乳を作る~」 教育資料出版会

フランク・オスキー 「なぜ牛乳は体に悪いのか?」 東洋経済出版

平澤 正夫 「日本の牛乳はなぜまずいのか」 草思社

など

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2013年4月25日 (木)

牛乳は本当に体に良いのか?②~牛乳がもたらす様々な健康被害~

こんにちは、りーさんです。


牛乳について、2回目の今回は「牛乳がもたらす健康被害」についてです。

その前にひとつお断りをしておきますが、僕は研究者でも医者でもありません。
これから書いていくことは、牛乳についての様々な研究報告や、それについて書かれた文献を基にしたものです。

私たち消費者は自分や家族が食べるものについて、メリットとデメリットを知った上で選択をする権利があります。
牛乳についても、メリット(と乳業者が主張する部分)だけを一方的に押し付けて、給食でこどもたちに強制的に飲ませるというのはおかしいのでは?というのが僕の意見です。

そして、一方的に牛乳を批判したいわけでもありません。
ただ「体に良い」というイメージだけでなく、牛乳を取り巻く様々な問題を知って欲しいのです。


「牛乳を飲んでお腹がゴロゴロする、下痢をする」

牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする、下痢をする、という経験のある方は多いのではないでしょうか?
その原因は牛乳中の糖質である「乳糖」が関わっています。

乳糖は小腸の中でラクターゼという酵素によって分解、消化されるのですが、このラクターゼの働きが弱いと乳糖を十分に消化できません。これを「乳糖不耐症」と言います。
乳糖が消化されないまま大腸に入ると腸内細菌が乳糖を分解してガスを出し腸を圧迫したり、多量の水分が一気に大腸に送られ下痢をするのです。

乳糖は哺乳類の母乳に多く含まれており、乳児は母乳内の乳糖を消化する必要があるためラクターゼの働きが活発なのですが、離乳とともにその必要がなくなり、生後1年半から4年の間に徐々に低下していくのです。これは人間に限らず、哺乳類全般に見られる正常な生理的変化です。

つまりヒトは通常、成長するにつれて乳糖を消化する能力が弱まっていくのです。

ヨーロッパなどでは乳糖不耐症の人の割合が少ないのですが、これは古くから牛乳を飲む習慣があり、それに合わせて長い歴史のなかで小腸が乳糖を消化できるように適応したと考えられています。
それに対して牛乳を飲む習慣のない地域では乳糖不耐症の人の割合が多いのです。

アジア人の95%、アフリカ系米国人とアシュケナージ系ユダヤ人の60~80%、米国先住民の80~100%、スペイン系の人の50~80%に乳糖不耐症がみられます。北欧に起源をもつ人では、非常に稀です(2~5%)。(deCODE genetics社報告より)

日本では成人の85%が乳糖不耐症であるという報告があります。
(フランク・オスキー「なぜ牛乳は体に悪いのか?」より)

乳糖不耐症には個人差が大きく、少量の飲用では自覚症状のない人も多いのですが、自覚症状のある人が「栄養のため」と思って無理に牛乳を飲み続けると、かえって腸に負担をかけ続けてしまうことになります。

そして、乳糖不耐症の人は牛乳アレルギーになりやすいという報告も
されています。(日本アレルギー学会「乳糖不耐症と牛乳アレルギーの密接な関係について」より)


「乳製品アレルギー」


前回、東京都の調査で3歳児の食物アレルギーが10年間で2倍に増えたと書きました。

この調査結果によると、1999年からの10年間で「何らかのアレルギーがある」割合は約36~38%と、あまり変化はありません。それにもかかわらず食物アレルギーの割合は増えているのです。

食物アレルギーの症状はぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などはっきりしたものだけでなく、腹痛、吐き気、だるさ、高血圧、めまい、さらには集中力不足、攻撃的行動など様々です。
アレルギーと連想されない症状も多いため、検査を受けずに見過ごされているケースも多いようです。

また最近、アレルギー反応がすぐに出ない「遅延型アレルギー」が増えています。
これはアレルゲンとなる食品を食べてもすぐに症状が出ず、数時間~数日経ってから症状が現れるアレルギー反応です。これは通常のアレルギー検査では発見できず、また症状が緩やかに出るため、自覚しにくいという特徴があります。
日本ではまだ検査体制がなくあまり認知されていないのですが、「同じ食品を毎日食べ続けるとなりやすい」と言われています。

余談ですが、妻はこの遅延型アレルギー検査によって「乳製品アレルギー」が、僕は「卵アレルギー」であることがわかりました。(ふたりとも通常のアレルギー検査では陰性でした。)なんとなく体が不調な人は、アレルゲンの筆頭である乳製品と卵をやめてみるだけでもずいぶん変わると思います。(体験談ですが)

また日本の牛乳は生乳を加工する過程で、アレルギーを起こしやすいように変質してしまうという問題も指摘されています。(これについては次回以降詳しく書きます。)

アレルギーという観点からだけ見ても、牛乳を毎日飲み続けることがどれだけのリスクになるかがわかるでしょう。


「乳製品と乳がんの関係」

イギリスの地質学者ジェイン・プラントは42歳で乳がんを患いました。
彼女は乳がんを患うまでは乳製品が体に良いと信じていて、牛乳、乳製品を多く摂っていました。乳房切除、放射線治療、抗がん剤治療などあらゆる治療を行っても治らなかったそうです。

彼女は自ら乳がんの原因を調査し続けた末に、乳製品を多く摂る国や地域では乳がん患者が多く、そうでない地域では乳がん患者が少ない事を知りました。乳がんと乳製品との因果関係を研究し、乳製品を一切摂らない食事法を続けた結果、再発、移転を繰り返す進行性乳がんを克服しました。その後15年、彼女のガンは再発していません。

そして2000年に、乳製品が乳がんの原因になりうるという研究結果を発表しました。
彼女の研究は高く評価され、医学の発展に貢献したとしてイギリス政府から勲章を授かり、王立医学協会の終身会員となりました。


プラントの研究では牛乳内に含まれるインスリン様成長因子1(IFG-1)という物質が、がん細胞の増殖を促すと報告されています。ある特定の食物が、ある特定のがんの原因になるというはっきりした研究結果はそれまでになく、誰も彼女の説をくつがえす事が出来なかったそうです。(ジェイン・プラント「乳がんと牛乳」より)

もちろん、乳がんの原因はそれだけではありませんし、大量の乳製品を摂らなければ問題はないとも言われています。

ただ、彼女は「栄養のために」と思って牛乳、乳製品を多く取り続けたために乳がんになったのです。

日本で乳がん診療を行っている医師を対象とした、乳がんと乳製品に関するアンケートでは約13%が「乳製品の摂取は乳がん発症リスクを高める」、約30%が「どちらともいえない」と答え、約57%が「リスクにはならない」と答えています。
Photo
(「医知恵 乳がん」ホームページより)

欧米に比べて乳製品の摂取量がはるかに少ない日本でも、4割を超える医師が「リスクにならないとは言えない」という認識を持っているのです。



「牛乳とカルシウム」

牛乳といえばカルシウム、と言われるくらい牛乳はカルシウムが豊富であるというのが「常識」です。そして「日本人はカルシウム不足」、「骨粗鬆症の予防に牛乳を飲みましょう」とも言われます。でも、本当にそうなのでしょうか?

牛乳の成分を見てみましょう。
100gの牛乳に含まれるカルシウムは110mg。

その他の食品を見てみましょう。(公平を期すために乾燥食材は除きます)

100g中のカルシウム量

桜えび 690mg  いかなご 500mg  ししゃも 350mg  油あげ 300mg  
がんもどき 270mg  モロヘイヤ 260mg  チョコレート 240mg 
黒砂糖 240mg バジル 240mg  厚揚げ 240mg 大根の葉 220mg
卵黄 150mg 小松菜 150mg 春菊 120mg ちんげんさい 120mg  
木綿豆腐 120mg 金柑 80mg しらたき75mg 塩蔵わかめ 45mg

(文部科学省 食品成分データベースより)

牛乳のカルシウム量が突出して多いとは言えませんよね。
牛乳を飲まなくとも、日本人が昔から食べてきた食品にはカルシウムが豊富に含まれています。

さらにカルシウムの摂取量について。
厚生労働省の推奨する一日のカルシウム摂取量は成人男性で650~800mgとされています。それに対して摂取量は420~550mgなので日本人はカルシウムが不足している、ということなのですが、WHO(世界保健機構)の推奨する一日のカルシウム摂取量は400~500mgです。
さらにWHOは「一日のカルシウム摂取量が300mg未満でも、健康に害を及ぼすという確固たる証拠はない」としています。(フランク・オスキー「なぜ牛乳は体に悪いのか?」より)

また、カルシウム不足は骨粗鬆症の原因になるといわれますが、実はカルシウム摂取量が少ないアフリカ原住民や乳製品をほとんど取らない中国人には骨粗鬆症患者が少なく、逆に乳製品からカルシウムを多く摂取する欧米人に骨粗鬆症患者が多いのです。そのため、乳製品の過剰摂取が骨粗鬆症の原因となるという研究者もいます。
(佐藤章夫 「牛乳と骨粗鬆症」より)



ここまでいくつか牛乳の健康被害を紹介してきました。

このほかにも様々な病気と牛乳、乳製品との関連性が指摘されています。
ただ、冒頭でも触れましたが、僕は一方的に「牛乳」を悪者にするつもりはありません。

矛盾したことを言うようですが、もともと牛乳はたんぱく質、糖質、脂肪、カルシウムなど豊富な栄養を持った食品です。そしてヨーロッパの人たちにとっては何千年もの間、貴重な栄養源であったことも確かです。

ただ、日本も含め世界的に食の欧米化が進んでいる国では、動物性のたんぱく質、糖質、脂肪の過剰摂取が脳卒中、心筋梗塞、がんなどの原因になっているという現実は見過ごせない問題でしょう。
毎日毎食、お肉、魚をたっぷり食べ、おやつにケーキやスナック菓子を食べ、たんぱく質も糖質も脂肪も十分すぎるほど摂った上で、さらに毎日牛乳を飲むことは必要でしょうか?

そして、牛乳を飲まないと健康になれないような強迫観念にかられて、我慢して牛乳を飲む人や、牛乳ぎらいのこどもに無理に飲ませようとする人が多いのも、「牛乳は特別」というイメージがあまりにも強すぎるからではないでしょうか?

どんなに良い食べ物でも、食べ過ぎれば害になります。
牛乳についても、もっとリスクについて語られるべきなのです。


日本での問題の本質は、日本人の体質に合わないものを毎日飲まされ続けることと、もう一つ、
日本人が飲んでいる牛乳のほとんどは、ヨーロッパの人たちが何千年も飲み続けてきた牛乳とは全く別の、乳業者の利益優先主義によって作られたまがい物だという点です。

次回からは、日本の酪農と乳業者の問題点について書いていきます。



2013/6/24追記

牛乳について連載していますが、その中でもこの「健康被害について」を読んでくださっている方が多く、とてもありがたい事なのですが、この回だけを読んで「牛乳は良くない」と思われてしまうのは僕の本意ではありません。僕がこの連載を通して書きたいのは、「本当に良い牛乳は(飲みすぎなければ)おいしくて体にも良い」という事であり、「日本の牛乳の9割は、乳業メーカーの効率主義のためにまずくて体にも悪いものに変えられてしまっている。」という事です。まだ途中ですが、この連載の最後には本当に良い牛乳を作っている素晴らしい酪農家の方を紹介したいと思っています。一つ一つの記事が長いため、全部を読むのには時間がかかると思いますが、もし興味があれば読んでいただけると嬉しいです。



参考資料

フランク・オスキー「なぜ牛乳は体に悪いのか?」 東洋経済出版

ジェイン・プラント「乳がんと牛乳」 径書房


星 猛 「生理学的にも牛乳は日本人にあわない」
http://www.sizenshoku-news.com/news/backno/int/i199801.htm

佐藤 章夫 「牛乳と骨粗鬆症」
http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/lifestyle2/milkcalcium2-3.html

deCODE genetics社 「乳糖不耐症」
http://www.biv-decodeme.jp/health/conditions-covered/lactose-intolerance.html> 

日本アレルギー学会 「乳糖不耐症と牛乳アレルギーの密接な関係について」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002409890

遅延型フードアレルギー検査 アンブロシア
http://www.ambrosia-kk.com/index.html

医知恵 「乳がん」
https://i-chie.com/breast-cancer

東京都 「アレルギー疾患に関する3歳児全都調査」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/04/DATA/60k4m103.pdf

厚生労働省 「平成23年 国民健康・栄養調査結果」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002q1st-att/2r9852000002q1wo.pdf

など

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